最新マンハッタン投資用一棟物件市場動向≪2026年Q1≫
2026年第1四半期のニューヨーク市投資用一棟物件市場は、引き続き堅調な推移を見せています。取引件数は前期比で6%増加し、取引総額も7%の伸びを記録しました。世界情勢の不透明感による金利の高止まりを受けて投資家の慎重姿勢は見られるものの、機関投資家やローカル投資家、海外投資家がバランスよく参画しており、現在の価格設定が市場全体で再評価されていることを示唆しています。米国債の5年および10年利回りは、今後の低下が見込まれています。この利回りの改善が借入コストの低減を促し、市場の取引をさらに活性化させるトリガーになると予想されます。
市場においては、物件タイプによる二極化が極めて鮮明です。ここで対象となる物件の性質について整理します。ニューヨークの賃貸物件は、一棟全体が単一のカテゴリーである場合だけでなく、一つの建物の中に家賃規制のない「フリーマーケット(FM)ユニット」と、家賃規制のかかる「レントスタビライズ(RS)ユニット」が混在するケースも多いのが特徴です。
・フリーマーケット(FM)ユニット:
家賃規制の対象外であり、市場の需給に応じてオーナーが自由に家賃を決定できるため、インフレや需要増の恩恵を受けやすい高収益資産です。
・レントスタビライズ(RS)ユニット:
法律により家賃の上昇率が厳格に制限されるため、コスト増大局面でも賃料転嫁が困難であり、投資効率が硬直的になりがちです。
強固なファンダメンタルズを背景に、「フリーマーケット物件(およびFMユニットを多く含む物件)」の取引は非常に活発です。企業による在宅勤務制度の廃止などの影響により、高級物件を中心に家賃が5%近く上昇し、マンハッタンの家賃の平均値は5,711ドル/月を超え高い水準を維持し続けています。また、ニューヨーク市の空室率は2026年1月時点で2.44%と極めて低い水準にあります。2026年の新規供給予定は約15,000戸と、2025年の28,000戸から大幅に減少するため、供給不足による家賃上昇期待が、FMユニットを抱える物件への投資意欲を強力に支えています。
一方で、「レントスタビライズ物件(またはRSユニットが占める割合が高い物件)」は法規制による家賃上昇制限と運営コストの増大により、経済的・運用的に大きな障害を抱えています。取引は低迷しており、FM物件との格差は拡大の一途をたどっています。2021年のパンデミック明けに低金利で組まれた投資用ローンの多くが、2026年から順次満期や金利リセットの時期を迎えています(2025年に満期を迎えた案件と比較し56%増)。FM物件所有者は好調な収益性を背景に有利な借り換えを進めていますが、RS物件所有者にとっては、家賃収入が制限される中で純営業利益(NOI)が悪化しており、高金利環境での借り換えに直面しています。
さらに金融機関の融資姿勢も硬化しているため、再資本化や物件売却という厳しい決断を迫られるオーナーが急増しています。加えて、マムダニ市長が公約に掲げているレントスタビライズ物件に対する家賃凍結が実施されれば、さらなる収益性の悪化が不可避です。2026年の後半にかけて、市場には割安な投資用物件が出回る可能性がありますが、その多くはレントスタビライズ物件(あるいはRSユニット比率が高い物件)であると推測されます。これらは金利と規制の二重苦にある可能性が極めて高く、取得を検討する際は、建物全体だけでなく「ユニット単位での規制状況」まで含めた詳細な収益性とリスクの検証が不可欠です。
(参考資料)
Ariel Property Advisors, Multifamily Quarter in Review: New York City Q1 2026
Elliman Report: Manhattan, Brooklyn, & Queens Rentals January 2026
Marcus and Millichap : New York Multifamily Market Report 1Q 2026
