最新マンハッタン投資用一棟物件市場動向≪2025年総括≫
2025年のニューヨーク市投資用一棟物件市場は、2023年を底に力強い回復を見せました。取引件数は前年比4%増、2023年比では12%増と着実に伸長しています。 取引総額は前年比2%の微減となりましたが、2023年比では15%増を記録しました。この活況の背景には、FRBによる計3回の利下げがあり、年末時点でフェデラルファンド金利の誘導目標が3.50%~3.75%まで低下したことが大きく寄与しています。
総額の微減については、投資家の「戦略的シフト」が要因として挙げられます。従来の大型物件(10戸以上の住居を含むもの)から、中小規模物件への投資へ資金が流れました。これは、中小規模物件には固定資産税評価額の上限設定があるためで、増税リスクから収益を守ろうとする投資家の防衛的な動きを反映しています。
市場の底堅さを支えているのは、ニューヨーク市の強固なファンダメンタルズです。マンハッタンの空室率は1.89%と12か月連続で2%を下回り、その結果、家賃中央値は4,995ドル(前年比11%増)まで上昇しました。特に96丁目以南の「フリーマーケット(市場価格)物件」の1戸当たり平均価格は635,209ドルに達し、2023年比で64%という驚異的な伸びを見せています。2015年のピーク価格(719,604ドル)には至っておらず、依然として上昇余地を残していると言えます。
一方、2026年1月よりマムダニ市長による新市政が始動したことで、市場環境は新たな局面を迎えました。 マムダニ市長は、急進的なテナント擁護派を要職に据え、住宅政策を急速に刷新しています。「市長直属テナント保護局」のシー・ウィーバー局長、および「住宅保存開発局(HPD)」のディナ・レヴィ局長は、いずれも住宅の質とテナント権利の保護を最優先する姿勢を鮮明にしています。 新政権はすでに、家主の慣行を厳しく追及する「家賃ぼったくり(Rental Ripoff)」に関する公聴会を予定しており、市全域の家賃安定(Rent-Stabilized)物件のオーナーにとっては、監視と法執行が大幅に強化される「冬の時代」を意味します。規制対象物件の所有には、これまで以上のコンプライアンス・コストと法的リスクが伴うことになります。
こうした激動の2026年において、投資家には「厳格な選別眼」が求められます。当局の監視が厳しい家賃安定の「レントスタビライズ物件」を多く含んだ物件は避け、市場原理に基づいてリターンを最大化できる「フリーマーケット物件」に資金を集中させる戦略が、現時点における最も合理的かつ賢明な選択肢となるでしょう。
参考:
・Ariel Property Advisors, Multifamily Year in Review: New York City 2025
