◆お役立ち情報◆米国不動産投資にかかる税務豆知識~初級編~

◆お役立ち情報◆米国不動産投資にかかる税務豆知識~初級編~

皆様こんにちは。このシリーズでは、米国不動産(賃貸物件)に投資する日本の皆様の税務について解説しています。前回は、法人投資家が米国不動産を保有した場合の不動産所得の課税について説明しましたが、今回は法人投資家が保有している米国不動産を譲渡した場合の日本の法人税について解説します。日本の個人所得税では、不動産の譲渡所得は、総合課税の累進税率(不動産所得、事業所得、雑所得に適用)ではなく、分離課税税率が適用されますが、法人税では他の所得と全て合算(損益は通算(相殺))されて同じ税率で課税されます。

米国不動産の譲渡益は次のように計算されます。
不動産売却価格(米ドルでの売却価格×譲渡時の為替レート)-土地の帳簿価格(米ドルでの取得原価×取得時の為替レート)-建物の(日本の法人税法上の)帳簿価格(取得原価-減価償却累計額)=不動産譲渡益

減価償却累計額とは、不動産(建物)を取得し事業の用に供してから、売却時までに計上した減価償却費の累計金額です。「事業の用に供してから」とは、減価償却費は不動産を賃貸し始めてから計上するので、例え、不動産(建物)を購入取得しても、賃貸し始めるまでは減価償却は開始できません。(賃貸契約が開始されていなくても、すぐに貸し出せる状態で、募集をしていれば、賃貸を開始したと言えます。)

過年度の法人税申告で、米国不動産所得を申告していれば、法人税法上の減価償却累計額と帳簿価額はすぐにわかりますので、上記の算式の計算は簡単にできると思います。ここで注意しなければならない点は、上記計算にも書きましたが、売却価格(米ドル)は譲渡時の為替レートで円換算しますが、譲渡原価となる土地および建物の(税務上の)帳簿価格は取得時のレートで円換算するという点です。つまり、円での譲渡益は、米ドルで計算した譲渡損益を譲渡時の円換算した金額とは異なります。

数値例で説明します。
<購入時>
土地  $ 200,000
建物  $ 800,000
合計  $1,000,000
取得時の為替レート:100円/$
円換算額:土地  20百万円
建物  80百万円

<売却時>
土地建物あわせて売却価格: $1,000,000
売却時の為替レート: 150円/$

売却時には、建物の減価償却は償却済み(帳簿価格ゼロ)(日米ともに)と仮定すると
譲渡益=$1,000,000×150円/$-土地譲渡原価$ 200,000×100円/$-建物譲渡原価0円=150百万円-20百万円=130百万円

ところが、米ドルでまず譲渡益を計算すると、
譲渡益=$1,000,000-土地譲渡原価 $200,000-建物譲渡原価 $0=$ 800,000 となり、
これを売却時の為替レート150円/$で円換算すると
$ 800,000×150円/$=120百万円になります。

この譲渡益の増差(10百万円=130百万円-120百万円)は、譲渡原価(このケースでは土地の取得原価)$ 200,000に適用する為替レートが、150円/$ではなく100円/$であるため発生する差額です。(10百万円=$ 200,000×(150円/$-100円/$))

実際の取引で考えると、円高(100円/$)のときに円価額としては割安で購入した不動産が、後日、円安(150円/$)時に円としては割高で売却できたわけですから、為替差益に相当するプラスアルファの益が生じているということになります。

一方で、円安から円高に転じると、上記と逆の現象が生じますので、売却を検討するときには、米ドルベースでの譲渡益だけではなく、為替変動による円での譲渡所得の増減まで考慮に入れたうえで、納税額も想定しなければなりません。なお、個人投資家と同様に、日本法人が米国不動産を譲渡した場合にも、一定額以上の譲渡価額に対しては米国源泉所得税(FIRPTA)が課税され、州や市によっては売り主である外国法人が地方税の予定納税を支払うことも必要になります。米国不動産を譲渡した日本法人は、連邦所得税申告書Form 1020Fを提出して、(譲渡価格ではなく)譲渡所得に対する最終税額との差額を追加納付あるいは還付してもらうことになります。

米国で納付した税額は、日本の法人税および法人住民税で、外国税額控除を適用することにより、一定の限度額内で控除することができます。また、納税者の選択により、外国税額控除を適用せず、法人税の課税所得計算で損金算入(税務上の経費計上)することも可能です。

著者 アクタス税理士法人 公認会計士・税理士 千葉哲範

日本公認会計士協会・租税調査会・国際租税専門委員会委員、日本税理士会連合会理事、東京税理士会常務理事、インテグラ・インターナショナル理事を現在、務める。企業法学修士(筑波大学)、米国税務修士号(Walsh College)を所持。これまで国内系および外資系企業への税務サービス、ベンチャー・キャピタルへのアドバイス、ベンチャー企業への株式公開コンサルティングなどに従事。クライアントに対して痒いところに手が届くサービスを提供することが信条。また、事務所運営では優秀なプロフェッショナルを育てる職場づくり、魅力ある組織づくりを絶えず追求している。

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