最新マンハッタン投資用一棟物件市場動向≪2024年2Q≫
2022年の半ばから、金利の高止まりと新しく施行されると噂されていた新たな賃料統制法(Good Cause Eviction法)の不透明感の影響で取引が鈍化していました。しかし、2024年第二四半期は、金利が下がり始める期待感およびGood Cause Eviction法が実際に施行され、想定していたよりも厳しい賃料制限ではなかった事から、ニューヨーク市内の取引総額が前期比25%増、取引件数においては前期比10%増という結果になり、不動産市場に活気が戻ってくる予兆が感じられています。マンハッタンに限定すると、今期の取引件数は、前期比45%増の29棟となっています。取引数の10年平均と比較すると、まだ回復には長い道のりというところですが、未来は明るいのではないかと予想されています。1棟あたりの取引の中央値も37%上昇しており、大型の取引も見られるようになってきました。(グラフ上の2024年数字は年間着地予想)
物件の売却の側面に着目すると、昨年は、物件を売却した所有者の全体の53%が個人投資家であり、ローンが満期を迎える方で高止まりする金利での借り換えが難しい方や相続やパートナーシップの解散などの理由がない限り、保有物件を売らずに持ち続けていました。今年は一転し、売主の43%が機関投資家およびREITとなり、彼らが保有する大型物件が売りに出始めています。
購入側に目を向けてみると、昨年は全体の78.3%が個人投資家で、そのうち45.5%が海外の個人投資家が占めており、いつもに増して、海外投資家の動きが活発でした。この中には日本人投資家も含まれており、アメリカ国内よりも安く資金調達できる事が影響し、ローカル投資家よりも優位な立場にいたと考えられます。しかし、今年に入り、投資判断の早い国内の投資家の動きが戻りつつあり、今まで判断に時間をかけることができていた海外投資家の勢いが抑えられ始めている模様です。6月末にBlackstoneが100 億ドルでAIR Communitiesを買収したことを契機に、今後機関投資家の動きも活発になるのではないかと予想されています。
注意:ニューヨーク市内の投資用一棟物件の取引量を示したグラフ。データはマンハッタン、ブルックリン、クイーンズ、スタテンアイランドを含む総合データ。2024(Annualized)の数値は、実績値ではなく、予想値から算出した数値。
出典:Avison Youngのウェビナー資料。