◆お役立ち情報◆ Transfer on Death Deedについて
前回は、ハワイ物件の個人から法人への名義変更について、解説しましたが、今回は、ハワイ物件を個人で所有されている場合のプロベート回避手段として、よく利用される「Transfer on Death Deed(TODD)」について、ご説明します。
1. まず、プロベートとは
「プロベート」は、ハワイ州の裁判所を通じて執行される遺産相続検認手続きを意味します。ハワイ州法上、個人名義所有のハワイ不動産は、プロベート対象資産となり、細かい裁判所手続きを経てからでないと、当該不動産を相続人に分配することができません。一般的に、弁護士の関与が必要となる手続きなので、プロベートの対象となった場合、相当の弁護士費用及びお時間を要してしまう可能性があります。
2. Transfer on Death Deed(TODD)とは
「Transfer on Death Deed」、通称「TODD」は、プロベート回避手段の一つです。TODDは、不動産所有者ご本人に、万が一、何かがあった場合のために、ご本人が、ご生前中に、予め死亡時受取人を設定する書面です。当該設定をすることによって、ご本人(設定者)が亡くなってしまった際、裁判所の関与なく、予め設定された死亡時受取人に、不動産の所有権を分配することができます。TODDは、ご本人(設定者)ご生前中、いつでも変更・取り消し可能であり、作成費用もお手頃なため、特に、ハワイ資産が不動産1物件のみという方にはお勧めです。
3. TODD設定の際の選択肢について
①死亡時受取人候補者:第1候補者、第2候補者という形式、あるいは同時に複数の候補者を設定する形式で進めることができます。前者の場合、第1候補者が逝去、権利放棄等によって、受取人とならなければ、第2候補者にその権利が移転します。後者の場合は、同時に複数の者が共有所有者として、所有権を受け取ることになります。
②死亡時受取人の所有形態:設定された候補者が、1名のみであれば、「Tenant in Severalty」(個人所有)という選択肢しかありませんが、2名以上である場合、「Tenants in Common(TIC)」あるいは「Joint Tenants with Rights of Survivorship(JT)」という2つの選択肢があります。TIC所有の場合、そのうちの1人が逝去すれば、当該逝去者の持分は、その相続人に分配されます。他方、JT所有の場合、当該逝去者の持分は、残された共有所有者に、自動的に移転します。
③死亡時受取人が未成年者の場合:ハワイ州法上、TODDの場合、21歳未満は、未成年者という扱いになり、成人するまでは、所有権を直接受け取ることができず、まずは、ハワイ州裁判所を通じる後見人の選任手続きが必要となります。その必要性を回避するために、TODD上で、予め「Custodian」(未成年者の管理人)を設定することもできます。
4. TODDに関する留意点について
①TODDは、ご本人(設定者)が署名する際、公証手続きが必要となります。
②不動産に関連する書面なので、「Bureau of Conveyances」(登記当局)に登記するまでは、有効となりません。
③夫婦共有所有の物件についても、TODDを用意することは可能ですが、この場合、所有権は、夫婦両方が逝去するまで、死亡時受取人に移転しません。
以上、簡単にご説明させていただきましたが、TODDについて、ご質問・ご相談等あれば、お気軽にお問い合わせください。
著者 GO LAW GROUP ハワイ州弁護士 佐渡山美紀
ハワイ州弁護士。カリフォルニア大学サンディエゴ校卒業、ハワイ大学にて修士号取得。その後ハワイ大学法科大学院卒業。ハワイの法律事務所Kobayashi Goda& Sugita、東京のモリソンフォスター法律事務所にて経験を積む。AZSA監査法人、東京スター銀行にてリーガル翻訳も務める。Go法律事務所では、主にエステートプラニング、相続案件、不動産案件、企業業務、M&A等を取り扱っている。