◆お役立ち情報◆ 個人から法人へ名義変更する際の留意点について
個人名義でハワイ物件を所有されている日本居住の日本人の方からよく相談される内容の1つが法人への名義変更です。変更先の法人は、ご本人がオーナーであるケースが多いので、簡単にできるはず、と考えている方が多いのですが、今回は、法人への名義変更を検討される際のいくつかの留意点を簡単にまとめてみました。
1. 関連税務
A. 譲渡税(Conveyance Tax)
物件の名義を個人から法人に変更する場合、ハワイ州税務局に対し、譲渡税を支払う必要があります。譲渡税は、物件の市場価格がベースとなるので、実際、代金が支払われなくても、課税の対象となります。税率は、譲渡価格によって異なりますが、例えば、$600,000未満であれば0.15%、$600,000〜$999,999であれば0.25%、と譲渡価格に比例して上がります。
B. 連邦源泉徴収税(FIRPTA)、ハワイ州源泉徴収税(HARPTA)
譲渡人が外国人である場合、キャピタルゲイン税の課税に先立ち、譲渡価格に対し、FIRPTA(15%)およびHARPTA(7.25%)の源泉徴収が発生します(1部例外あり)。翌年、確定申告でキャピタルゲイン税を納付した後に、過納分は還付されますが、事前払いが必要となるので、こちらの費用も考慮しなければなりません。
2. 権原保険(タイトル保険)
ハワイで物件を購入する際、購入者は一般的に権原保険に加入します。権原保険は、権原保険会社が不動産の過去の登記記録を漏れなく調査し、その不動産の権利が正当であることを保証するもので、購入後、保証される内容に関し、第3者からのクレームが発生した場合、保険会社が保護を提供します。権原保険は、譲渡不可なので、法人への名義変更をする際、新規加入が必要となります。保険料は、譲渡価格ベースとなりますが、こちらも名義変更の際に要する追加費用となります。
3. 法人登記
個人所有の物件を長期あるいは短期でレンタルされている場合、法人への名義変更に際し、日本法人であれば、外国法人登記をしなければならず、また、米国納税番号および売上税(General Excise Tax)の課税に伴うGETライセンスの取得が必要となります。また、外国法人登記をすることによって、本年から施行された企業透明化法(Corporate Transparency Act)の対象となり、米国財務省金融犯罪捜査網(FINCEN)に対する実質的支配者に関する報告が義務付けられます。他方、名義変更先となる法人をハワイ州にて新規設立される場合、上記要件を満たすだけでなく、当該法人の所有者が誰になるかによって、米国側での相続対策も必要となる可能性があります。
お客様の状況によって、対応方法が異なりますので、個人から法人への名義変更を検討される方は、まず、税務およびリーガル面に関し、各専門家の方とご相談されることをお勧めします。
著者 GO LAW GROUP ハワイ州弁護士 佐渡山美紀
ハワイ州弁護士。カリフォルニア大学サンディエゴ校卒業、ハワイ大学にて修士号取得。その後ハワイ大学法科大学院卒業。ハワイの法律事務所Kobayashi Goda& Sugita、東京のモリソンフォスター法律事務所にて経験を積む。AZSA監査法人、東京スター銀行にてリーガル翻訳も務める。Go法律事務所では、主にエステートプラニング、相続案件、不動産案件、企業業務、M&A等を取り扱っている。